見慣れた路傍の横顔を見た/熊野とろろ
 

どうしたことか
僕は立ち止まり周囲を見渡した
ひっそりとした青の空間
生温い生命が近くで息づくのを察知した

ここはずっと前にも来た場所だ
その瞬間、絶望に落っこちそうな気持ちが
決まって胎児の頃のような安息に変わるのを知る

予定調和なのだ
感覚自体がとても予定調和である
意識はめまぐるしく行き来するというのに
嗚呼、すべてが音もなく崩れる!

僕たちが話し、交えたこと
そのなかのいくつだけが
手足が生え、歩き出したというのだろう
「戻ってこい、戻ってこいよ!」
どこまで行っても叫びは続くようだ

不意に草の葉で手を切ってしまった
赤く流れる血が早く瘡蓋になればいい
瘡蓋に溜まった膿みを押し出してやる

そこから
傍観が終わればいい
僕の膿みとこの青の空間は
深く関係しているの?

「愛情を知りなさい」
僕は息を大きく吸い
立ち尽くすことをまだやめようとはしなかった


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