空中は狭く侘しい/熊野とろろ
 

僕が暮らすには少し広すぎるこの8畳のワンルーム
吐き出す煙で空気はとても悪いだろう
しかしあの娘が部屋に来るとむしろ狭く感じるのだ
この部屋はどこにも逃げ場がないのだと気付く
悲しむなかれ、侘しいポケットの小銭
生憎有り金はこれだけだけれど
あの娘は悠々と浮遊しているではないか
浮遊はまさに「ノー・フューチャー」のよう
人類が繰り返した破壊と再生を見ているかのよう
でも僕はそこに何の光明も見いだすことが出来ないのだ
幻想に眩まされた掃いて捨てるほどの1日
退屈な僕らの地図と今日も睨めっこをしている


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