灼熱の季節/熊野とろろ
立ちの粒子よ
どうしておれはひとを殺せようか
この 愚かで 恥そのものの
しかしどうすることもできない 苛立ち
これによっておれはひとを殺すかもしれないのだ
街がまさに燃えている
静かにおれは唾を飲み
灼熱の記憶を遠く遠く押しやり
さようなら さようならと
不確かなまま繰り返していた
故郷の海の香り 潮の香りよ
新緑の木々よ 沈黙の森よ
聖なる滝よ その不動の歴史よ
見えざる自然よ 大いなる全て
所詮は流れ消えゆく雲のように
おれに何も与えてくれなかったじゃないか
さようなら 唾が溜まり
さようなら 吐き出すほかない
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