灼熱の季節/熊野とろろ
 
立ちの粒子よ
どうしておれはひとを殺せようか
この 愚かで 恥そのものの
しかしどうすることもできない 苛立ち
これによっておれはひとを殺すかもしれないのだ

街がまさに燃えている
静かにおれは唾を飲み
灼熱の記憶を遠く遠く押しやり
さようなら さようならと
不確かなまま繰り返していた

故郷の海の香り 潮の香りよ
新緑の木々よ 沈黙の森よ
聖なる滝よ その不動の歴史よ
見えざる自然よ 大いなる全て
所詮は流れ消えゆく雲のように
おれに何も与えてくれなかったじゃないか

さようなら 唾が溜まり
さようなら 吐き出すほかない


戻る   Point(1)