灼熱の季節/熊野とろろ
 

心は死んで あいつは
墓の中で薄れながら しんなり笑っていた
電車は定時にきっかり訪れ
我々の事情も知らぬまま また
また 繰り返す
毒を盛ることなどや ほか 様々なこと
を 試みに 繰り返す

三年前のこの季節を当分は思い返す
なぜならおれはこの季節が孕んでいる真実の灼熱に
焦がされた一人なのだから
真実の灼熱 それは一体何か?
ふとしたことでおれの足は止まった
じり、じり じわ、じわ
何ものかにおれは染め上げられていくのを感じた

それからどれだけの時間が過ぎたのだろうか
おれの足は一歩も前へ踏み出せずにいたのだ
日々増幅していく この 苛立ち
苛立ち
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