隔離病棟/1/遊佐
に過ぎて行く
それを眺める僕は魂の抜けた傍観者
心持たない人形のように、時を見過ごしている(そういう風に他人の目には映るのであろうと思う、その方が楽だ)
隔離病棟の一日は平穏で退屈なもので、僕が動かなければ
何事もなく穏やかに過ぎて行く
(暴れることも時には必要な存在証明ではあるのだが、このかけがえのない時間を無駄にはしたくないのだ)
昨日、僕はヒーローに出会いました
かくも醜い世の中に於いては神にも等しい存在として浮かび上がるものなんですね。
僕のヒーローは毎朝決まった時間に扉を開き、満面の笑顔をたたえて颯爽と
この部屋にやって来る。
彼は僕の唯一の理解者であり、どんな薬も効かない僕の病気に言葉と言う名の特効薬を与えてくれる
そしてポケットから薬を取り出して僕に与えてくれる
「これはね、まだ日本では手に入らない貴重な薬なんだ、君だけにあげるからんだからね、内緒だよ」
勿論です、僕は誰にも喋ったりはしません
貴方と僕、二人だけの秘密です
(彼は神様です、キリストよりも偉大で、御釈迦様よりも慈悲深い方です)
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