左手で書いたノート/光井 新
 
張らなきゃ。
授業なんかも、前よりずっと真剣に受けられるようになった。今はまだノートを取るので精一杯だけど、それでも今日一日で文字は大分上手くなった気がする。小さいけれど、努力した分だけちゃんと前進してるんだ。

「ふ〜ん、そりゃ周りも気ぃ使うわなぁ。ぶっちゃけ俺も、今までお前に直接聞かなかったけど、その右手の事気になって仕方無かったもん」
「今まで気を使ってくれてたの?それ聞いてちょっとショック」
「そりゃそうでしょ、付き合って一ヶ月にもなるのに、右手の事について何も聞かないなんて。お前の方から話してくれるの待ってたのに、お前って俺の事何だと思ってたの?」
「気にしない人だと思って
[次のページ]
戻る   Point(2)