左手で書いたノート/光井 新
 
ートは今日で終わりだけど、これからも、自分の気持ちとちゃんと向き合える、そんな人間に私はなりたいな。
きっかけは右手が動かなくなった事だったけど、右手が動かなくても私には左手がある。そうやって生きていくしかない。
生きていくなら、気持ちは前向きの方が良いに決まってる、だからもう、いつまでも後ろを向いてないで、ちゃんと動いていた頃の右手ばかり見てないで、前を見て生きていこう。

「そういえば途中からずっと気になってたんだけど、あそこに飾ってある木彫りの千手観音像ってここに出てくる仏師君から貰ったの?」
「ま、まぁそういう事だけど」
「どおりでお前に顔が似てると思った、目とか、観音様なのに穏やかというよりは、びしっと前向きな表情してるし」
「それよりもノート!」
「わかってますよ〜、ちゃんと元の場所にしまっときますよ〜。ん、手紙発見!」
「それはダメ!」
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