ジューサーとオレンジ/ふるる
いやに煙くさいので
ジューサーは目をあけると
驚いて動けない
火があちこちで燃えている
ジューサーはそばに転がっている
オレンジに緊急事態をうったえた
オレンジも目をあけると
驚いて動けない
あちらこちらが火の海だ
ジューサーとオレンジは
抱き合って震えた
ついでに
絞りたてオレンジジュースが
とぷとぷと流れ出したが
あっという間に蒸発し
もはやこれまでと思われた
が
オレンジの服を着た消防士が
飛び込んできて二人を抱きかかえ
危ういところを助かった
二人は頼もしい消防士に一目ぼれ
恋のライバルとなったので
抱き合ってオレンジジュースを作るという大役を忘れ
互いの役割を
二度と再び果たすことは
なかった
ところで
消防士は二人からラブレターをもらったが
ジューサー語もオレンジ語も習っていなかったので
まったく意味が
分からなかったという
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