旅立ち、と未熟が吹かしたがる/ホロウ・シカエルボク
 








切傷のように震えた呆然の午後、路上で渇いた迷いミミズの跳ねる光を右目で受けて
どこかで聞いた歌の一節を思い出そうとしていた、結果として叶わずともいいような、そんな願望
だけどそんな願望ほど激しく騒いで余所事を考えさせてはくれないのだ
駅に入る六両編成の特急列車のざわめきが青黒い梅雨の晴空に立ち上る雷のようなエコー、旅に出るのか、バラバラと乗り込む、影のような奴らの緩慢とした移動
ベルが鳴り、扉が閉じ、荒れた有袋類のような音を立てて車輪が軋む、滑りだすときの速度にはいくらかのナルシズムが確かにあるだろう
そいつが行ってしまうと駅前通りは空っぽの籠の
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