真空にかすり傷/木屋 亞万
 
見えない銃の見えない銃弾は
知らないうちに知らない人を撃ち続ける
見えない銃に撃たれたことのない人などほとんどいない
誰しもが一度は撃たれ、そのことに気付かず平然と過ごしている
見えない銃弾は肌を傷つけない、ただ年を取らせるだけなのだ

誰もが空から降り注ぐ弾に撃たれ
地面から撃ちあがる弾に撃たれ
正面から流れ来る弾の群れに撃たれ
背後から撃ちぬけていく弾にさらされている
しかし何も恐れることはない

それらは痛くも痒くもない
少し寂しくなるだけで
少し大人になるだけだ
少しずつ死に近づいていく、
薄い毒みたいなものなのだ
薬と毒は紙一重、だから恐れることはない
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