朝の生きもの/木立 悟
 


影と壁と風の生きものを
藪のなかから鳥が見ていた
朝にだけ現れる生きものの
羽音のような目覚めを見ていた



生きもののからだに光があたると
たくさんの傷が道にひらいた
鳥の翼にも 涙にも
見えない光源のかたちを描いた



石の光をついばむ鳥
手さぐりで進む
明るく見えない道
ゆっくりと
ゆっくりと動く水



朝の生きものがつくる影
朝の生きものをつくる影
壁を流れる枝の影
手のひらの上に現れては消える
たくさんのたくさんの傷の影
ついばむ鳥に満ちてゆく
光の姿に満ちてゆく







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