気が遠くなるほどの時間 独りぽっちだった君へ/……とある蛙
独りぽっちの君は
屋根の上に座り
じっと膝小僧を抱えて
星空を眺めていた。
独りぽっちの君は
部屋の隅に座り
じっと膝小僧を抱えて
畳の目を眺めていた。
独りぽっちの君は
公園のベンチに座り
じっと膝小僧を抱えて
日向ぼっこをしている
老人や失業者を眺めていた。
たとえ
彼らは家族があっても
住む家があっても
食べるご飯があっても
独りぽっちで
生きている意味が見つからない。
生きている楽しさが見つからない。
子供のころの自分を見失って
心が潰れてしまい
言葉を失い
顔を失ってしまったのだ。
同じように僕は
今、峠の上に座り
じっと膝小僧を抱えて
街から峠に向かって歩いてくる人と
峠から街に向かって歩いて行く人を
交互に見比べては
話しかけもしないで
溜息を吐いている。
それでも、もう一度話しかけるために
僕は
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