へびいちご/
ミズタマ
どんなに悲しく思っても
どんなに愛しく思っても
あのひとの歩き方も、もう
思い出せない
思い出さない
遠くのほうで鳩が鳴いて
自転車の下にへびいちごを見つけた
あのひとが私にくれた
指輪の宝石の色に
よく似ているへびいちご
愛らしく私の指で光っていた
よく似ているへびいちご
その赤い実を手にとって
日光にかざすと
溶けてしまいそうに光り
やがて私は
あのひとの名前も、もう
思い出せない
思い出さない。
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