失う/番田
部屋に戻るとそのテレビにはワイドショーしかやっていないが
持っているゲーム機もファミコンしかなかったので
絵でも描いてみることにした
木枠にキャンバスを張り込んで鉄釘に打ち込んでいく
失敗で波打つキャンバスに
何かを考えながら生きていくというのはつらいことなのだが
けれど拒食症なので突然モチーフを変更し
ガラスの瓶を描くことにする
そうしているということは努力をしている証拠だと
コンビニでパンを買い込んだ
アパートの生活に備えた
今日も履歴書に色々な書類をつっこんで送ってしまう
平日の街というのは晴れ渡り 休日の人がかわいそうになる
自分ほどかわいそうな人間もいないだろうけれど
光が拡散するなかに抽象的な世界をかいま見た
肉肉しいスーチンのように物体へとさし迫っていく
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