短冊と落とし文月/書くことの規矩/海里
 
料理のためにはさしすせそがあって
書くためにはかきくけこ

砂糖と塩と
酢、醤油、味噌がこの順番なのは
砂糖や塩は浸透圧で
味の道を開くからだというね

それで
書くことは書きますこと
規矩はコンパスとものさしで
あとは稽古と
稽古ではなくて罫とその故か

円積問題とか
方程式以前には全部ぶつぶつと言葉でやってんだしね

コンパスさえあれば
分度器はなくてもいい
ものさしだって目盛り付きじゃなくても
ただ真っ直ぐに直線であるだけで
ほら
五角形くらいなら書けるよ
晴明桔梗とも呼ばれている魔方陣だ

だから自由に
あらゆる姿勢で書くこともいいだろう

横座り
寝転んで
音楽を聴きながら
電車の中で出せないメールのかわりに

ただ同じだけ真っ直ぐに
居住まいを正して
規矩をもって紙に向かうのもいいだろう

あたかも神に向かうように

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