親和/霜天
夕暮れ間際のジェット機は誰かのために帰ろ
うとしている。吐き出した言葉を誰か、が飲
み込んでいくような、当たり前。涙を零した
いように、零して。溶けたいように溶けてい
くあなたを隣で見ていた私だから、消えそう
になっても存在、できる。転居届はもう出し
ましたが、存在の証明はどこに届け出ましょ
うか。ここでは渡るための梯子が希薄で、手
を振り返さないことが規約のようで。片仮名
混じりの言葉を投げかけては、ばらばらに混
じった隣人の輪郭を、組み立てることで一日
が終わります。ジェット機は、帰っていきま
す、希望のまじないのような気もします。何
時の間にか溶けきってしまったあなたを、塵
取りに拾い集め、水槽のよく見える位置に積
み重ねておく。音のないジェット機が明日の
ために離陸する。私はまだ、私になれていな
い。帰属する集団、一つの家という輪郭。積
み重なったあなたが、かたちになって帰って
くる。私がそこに、着陸する前、に。
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