今が楽しければそれでよくないけれど/中原 那由多
燕たちは毎日忙しそうに
低空飛行で私の横をすり抜けていく
目にも止まらぬ速さに遅れをとり
ぶつからないと分かっていながら避けようとする
よくもまあ人身事故を起こさぬものだと感心しながら
前方の信号無視をしていく自転車に目が止まる
とっとと人身事故を起こせばいいのにと鼻で笑って
他の人とは少し違う道で登校する
あの人とあの人を足して2で割ったらきっとあの人になる
試してみたい?
駄目だよ、妄想だけにしておかなきゃ
理想を崩すにはできるだけ凄惨な現実のほうがいいはずだから
人は全うな真実の受け入れを拒んで
非現実を本物にしようと願っている
うん、私もその一人
百万通りの道があれども
目的地は一つしかないから
みんなは必死になるんだね
戻る 編 削 Point(3)