生まれない夜/カナシミルク
言葉がひどく散文的にしか並ばない時がある
閉じているところがなくって恥ずかしい夜
開ききった眼が生きている明け方
まっすぐに
言葉が届いてしまう夏の朝のことだ
嘘吐く口の中に真実が潜んで
避けられない悪魔
耳を貸したら濁る眼 目を差し出せばノイズ
手を貸せば足を引き摺られて
詩を差し出せば言葉はもう並ばない
肉体から
熱を放出して人は死ぬ
皆死んだら熱くて私は死ぬ
今日の肉体が熱を逃がさないから
夜が涼しいのだ
そういう夜に言葉を並べようとする
勇気などいらないというのに
編集者どもは今日も他人の言葉を並べて夜を越えていく
眠ることを忘れたかのように!
いくつもの屍を跨ぎ
今日も生きようとするのは何故
私も再び死者を起こす
幾度もノックして異界の扉を開けてもらう
誇らしげな自分の顔の醜さ
たった一度の生を死にきることを選べない弱さたちよ
飛ぶことができない
ならば翼など切り取ってしまえ
死を生に縛り付ける
痕跡だけを背負った者は足を鍛えよう
誠実に生まれない夜を歩き
この日々を運ぶのだ
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