番/tutty
ヒーローがクスリ一つで変容してしまうなら
精神病院の先生にも彼自身も何故だか分からないだろう
もう彼は分からないだろうけど
カンブリア期に絶滅してしまった仲間達の奇妙な歌が
それは微生物の溢れた豊かな川の寄り道だったろう
上流には左腕しかない天使たちの住処があったろう
下流では色と色がぶつかり笑い声の混じった陣取り合戦があったろう
やがて海に成ったとき
一斉に泣き出した幾がいの単細胞の塩と酸素と炭素
結局は何だったのか、
彼はもう分からないだろうけど
右腕と左腕が一つになり
モザイク柄の人々が集まってモザイク柄を形成している世界を見て
重力と引力しか光を歪めずただ確かに暖かいと感じた
隣にうずくまった影を置いて走る事が出来たなら
驚かないまま音を立てないで
開いた月に唾を吐いた
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