退廃の舞/木屋 亞万
 
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衰えていく、老いた者たちは、
口々に文句を言い合って、好きなところで溜め息を吐く
人は耳から老いていき、口は死んでも動いている
「もう世界は終わりだよ、十人ばかりの権力者が
偉そうに暴れてはいるが、彼らもそのうち死ぬからな」
テレビの中の砂嵐に、死に別れた妻を見つけて
すがり付いている人がいる、幸せな笑顔など、もうこの世界にはない
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焦らしていた空は、ついに雨を降らせた
難解な世界は濡れて機能を停止していく
涙が、誰かに死を望まれた、多くの瞳から
一粒一粒こぼれていく
この雨雲の彼方に、晴れ渡る空があり、
今宵の星は昔より多く瞬いているだろう
ちょうど惑星ひとつ分くらいの命が星になっていったのだから

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