どうして、また/ホロウ・シカエルボク
 
の女なのかどうか判らなかった、真っ白で…なんと言えばいいのか―人型の繭を宿っていた、例えば木の幹から引き剥がしたような、具象化された軌跡のような細い筋が身体から幾つも伸びていた、それはこちらを見ているように見えた、それは笑っているように見えた、だけど本当は向こうを向いていて、もしかしたら怒りに顔を歪ませているのかもしれなかった、そしてそれがどちらであろうとなかろうと、どうでもいいことのような気がした、女はやる気のないフィギィア・スケートの選手みたいに同じ速度で同じ距離をずっと左右に移動していた、当然足は動いていなかった、平行移動する振り子みたいだった…俺はなんということもなく、女の動くさまをずっと眺めていた、まるで現実感を欠いていて、恐怖など感じられなかった



突然、背後で誰かの気配がした

「どうして、また来たの?」




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