家電物語/たもつ
器洗浄器の実演販売をしているが、そんな時でさえも、むやみやたらに人を傷つけないという海の掟は絶対に破らない。
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すべてのものはいつか必ず土に還るのだ、と信じて、古くなった家電たちは今日も自分の墓を掘り続けている。
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炎天下、大型の家電を運ぶ配送センターの青年からアスファルトに落ちた汗の雫は一瞬のうちに蒸発し、明日はどこか他のところで誰かのための雨になるのかもしれない。
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風に乗れなかった紙飛行機が一機、エアコン売り場の床に墜落している。
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人々が衣服を汚すことのない世界を夢見て、洗濯機はひとり最終列車に乗った。
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