[時計のない部屋]/東雲 李葉
 
眠れない夜には音の無い部屋。
世界にたった一人だけ。
誰も信じられないのに来るはずもない人を想う。
文字の羅列が束の間今を忘れさせる。
誰もあたしを知らなくても、
あたしは貴方だけを知っていたい。
時計のない部屋で待ってる。
何にも苦痛なんてないけれど、
飴玉の袋ばかりが増えて虫歯になりそう。
今はただ老いも忘れて少女のまま。
ただ真っすぐに父の背中を懐かしむように。


眠らない夜には星の無い空。
光を知らない暗い世界。
あたしさえも見失って今どこに立っているのか。
淋しい歌が渇いた心を慰める。
貴方があたしを愛さなくても、
あたしは貴方だけを愛する。
時の
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