ひとつ よびこ/木立 悟
 





巡り終え
巡り終わらぬ花ならん
皆なかに澄みなかに澄み
花に至らぬ花ならん


埃が咲いて
小さくうすく
まばゆさはただ
夜の手のひら


冷たすぎる手のなかに
氷はうたい 溶けてゆく
溶けないものを見つめながら


曇は曇に染み
ひかりそこはか
赤子のようにうなずく羽


藍に塗られた
偽の涅槃図
救済は無く
壁は重なる


あずかり知らぬ火
緑の火
蝶の花たば
燃え落ちる巣から飛び立つもの


冷えたからだ
こだまする水
呼ぶのは器械
空の器械


暗いひろがり
たましいの波
声のかたち
こすれ ひかる


雨指 はざま
昇り降りる花
ひとつ澄む音
水の手のひら

















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