回帰する海/あ。
 

薄くほこりをかぶっているような錯覚を覚える

夏の深い空に映えている瑞々しい緑
のはずなのに



時々自転車で通り過ぎていた田んぼは
これよりうんと小さかった
それでも点在していたはずのものが
気付いたときには一つもなくなっていた


時が流れることに理由なんか無くて
この星の大きさは限られていて
きっとこれが最良の使い方なのだろう

そう思っていても、わかっていても
胸に迫るこの気持ちをどうすればいいのか
泣きたいのか笑いたいのか怒りたいのか
投げ出されたように途方にくれてしまう


果ての無いように感じるこの風景も
いつか端っこが見えるようになるのだろうか
そしたら目を背けてしまうのだろうか


わたしたちは何処から来て何処へ帰るのか
ありふれた疑問に押しつぶされそうになる
痛みを抱きしめられるだけの強さを
手を広げてもあまりある大きさを

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