巣箱/エズミ
昼ごはんのあと
かたづけがひとまず済んだ
うす明かるい台所。
水切りかごの中には茶碗や箸や
小鉢や玉杓子なんかが、
伏せられて
おとなしく乾くのを待っている。
毎日なにかしら、人の手が触れてきた
鍋や薬缶やステンレスボウル
フライ返しや泡だて器は
整然というほどよそよそしくはなく
雑然というほど無頓着ではなく
散漫なまとまりで重なっている。
丁寧というほど慎重ではないが
まあ、中庸の扱いで時間に晒して
鈍い痕がついている。
胡椒や粉山椒や、ナツメグなんかの
ありふれた無節操にしたって、
店先でみつけたときは
あまりにも溌剌と並んでいるので
なんだか小恥ずかしかったが
今ではすっかりなじんだ色だ。
いつのまにか集まっただけなのに
うちとけて、くつろいだ人たちと
一緒にいるような、淡い放心。
さて、食器をしまおう。
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