奏でるものたち/瑠王
 
バーに行けば オーケストラが行き交う

饒舌なバーテンダーが指揮をとり

客は各々の楽器を手にする


銀行員の男性は総銀製のフルートを吹く

離婚歴のある女性が笑うようにピアノを叩き


常連の男性が足で拍をとる


彼女のチェロの音色が 心を引っ掻く


シェリーをたしなんでいた寡黙な青年が 突然シンバルを鳴らす


すると 初老の紳士が ストラディヴァリウスで静かに独奏を始める



私達は演奏する

各々が黄昏と暁天を共にしてきた楽器を持ち寄って


明日は単音かもしれない

しかし三日経てば それが和音であることに気づいたりして

そうやって曲を完成させていく



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