0か、○か/木屋 亞万
出されて、船外に浮遊している自我は
宇宙の塵に紛れてしまった、宇宙の中に溶け込んでしまった
先生の○になんて、何の価値もなかったのだけれど、
あの頃の先生の気圧は、僕らの心を押しつぶすには十分だったんだ
紆余曲折、七転八倒、無我夢中、気付けばこの世は0だらけ、
道行く人は0に感染してしまっている
かけても割っても足しても引いても、0は0にしかならない、
0がいくつ並んだところで、その頭に1がなければ
君たちが好きな、価値というのは得られないということになる
0まみれの僕たちは、一つになる幻想をみて
本能的にくっつき合う、何度も身体を打ち付け合って、
疲れ果てて眠りにつく、その刹那、∞になれた夢をみるのだ
僕らはどうあがいても人間で、
どうしようもなく0だけれど、
だからこそ見る夢があって、
0に救われるときだってあるんだ
そう信じていたい
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