希望とか夢とか自分とか/蓮沼 栞
耳障りな歌を唄うインディーズバンドをリスペクトして、本当に好きな歌手は隠れて聴いていた。
普通でない事を恐れていたあの頃は、大人になれば恐れるものが無くなると思っていた。
憂鬱を吹き飛ばす恋愛や、ドラマみたいな暑苦しい友情も無く、護られる事に反発しながら自分を護るだけで精一杯で、
ヒーローを夢見ていた頃を懐かしんでいた。
大人になって、夢見ていた未来という存在を、手の中で見据える事が出来る様になった。
そして
恐れだけが残った。
明日が来る事を、恐れる大人になった今の僕を、過去の僕は、はたしてどんな目で見るのだろう。
そして未来の僕は、どうなってしまうのだろうか。
朝起きると、会った事もない女におはようを言う。
それが唯一の、今の僕の希望である。
戻る 編 削 Point(3)