希望とか夢とか自分とか/蓮沼 栞
 
耳障りな歌を唄うインディーズバンドをリスペクトして、本当に好きな歌手は隠れて聴いていた。
普通でない事を恐れていたあの頃は、大人になれば恐れるものが無くなると思っていた。
憂鬱を吹き飛ばす恋愛や、ドラマみたいな暑苦しい友情も無く、護られる事に反発しながら自分を護るだけで精一杯で、

ヒーローを夢見ていた頃を懐かしんでいた。



大人になって、夢見ていた未来という存在を、手の中で見据える事が出来る様になった。

そして
恐れだけが残った。

明日が来る事を、恐れる大人になった今の僕を、過去の僕は、はたしてどんな目で見るのだろう。

そして未来の僕は、どうなってしまうのだろうか。





朝起きると、会った事もない女におはようを言う。

それが唯一の、今の僕の希望である。
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