手我身/みっきゅん
 
無垢な便箋を目の前にすると、ドキドキとワクワクが駆け巡って、筆がとんと進まない。

いっそとそれを一頻り堪能していたら、ふと急かされている気がして、目線を少しばかり窓の外に逃がしてみた。

いつも大人しい野良犬が、この時ばかりは騒々しく駆け回っていたから、もしかしたら何か良いことがあって、誰かに伝えたかったのかもしれない。

はしゃぐような呼び掛けるような声を耳に視線を戻すと、無垢なそれもなにやら楽しそうに見えたから、これからの良いことを想像して急かしていたのかもしれない。

このドキドキとワクワクは共有しているのだと一人納得したころ、筆は自然に不思議と滑らかに踊り始めた。


鮮やかな想いで彩られたそれは、今、彼の人の元へ嫁いでゆく。

彼の人を鮮やかに彩るために。
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