指とまなざし/木立 悟
 






夜が落ち
夜に鳴る
風の無い 夜の明るさ


羽 葉 紙 綿
重なりと水
空へほどけ 沈む光


緑降る日
誰もいない日
青の足跡
水へつづく坂


煙のような岩山が
歩みのそばに笑っている
湖の辺
春を見ない鳥の声


冬のはじまりのなかにある
火のはじまりへゆくのです
ひとつまみ つんざき
ひとつまみ つんざき


あやふやな手くだ
小さなひとの気配のかたち
からめとり からめとり
あたたかをひとつ編んでゆく


まなざしを知っています
他ならぬもの
底から来るもの
ひとつきりのもの



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