ビルケナウからの手紙/月乃助
……
ええ、それはもうよく聞かれるのでございますが。
本当のところ、私も理由などあったものかと
思っています。
お偉い先生方は、なにか公式でも探すように、
生き残った者達を類別しようとするのですが、
どうも、それが、真実の響きがないのは、
わたしの思い、だけではないようです。
ビルケナウ村は、第二収容所のあったところで、
アウシュビッツの方が第一でした。
三段ベッドは少しのわらで、
五十のベッドに二百人が
眠りました。
わたしは毎晩、眠りに付くとき、ただ、
パン屋のことを考えました。
夫がパン屋だったからです。
それが、どうしたと言われるかもしれま
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