もうひとりのぼくが囁く/殿岡秀秋
したがって
からだで感じようとすると
下腹の奥のあたりに
澱んだ液体が残っている気がした
もう一度だけだと思って
押入れをおりる
トイレに行っても何も出ない
やはり出ないじゃないか
と声には出さないで
もうひとりのぼくにいう
ところが布団を被ると
まだ残っているよ
よく感じてみろ
という声が聴こえる
かゆみのようなものが
下腹にわきおこって
すっきりさせたくなる
それでまたトイレに向う
もう出るわけがない
戻って布団を被ると
まだ残っているよ
という声がする
それを聴くと
痒くなるような気がする
ぼくは出し切ってしまいたくて
トイレ
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