家族/たもつ
○父
窓から庭のブランコを
眺めることが多くなった
あれにはもう一生分乗った
と言って
時々体を揺らす
背中が
押されるところではなく
支えられるところとなってから久しい
○母
美味しいのは音でわかる、と
スイカをひとつひとつたたき
一番良い音がしたのを買っていく
後には粉々になったスイカが散乱し
甘い匂いとともに
短い夏は始まる
○兄
深夜、起きだして
大好きな人のために
ひとり
腕立て伏せをする
○僕
これでも昔はもてたんだぞ
と自慢したりするけれど
今でも満員電車が苦手で
人に足があ
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