家族/たもつ
 
 
 
○父

窓から庭のブランコを
眺めることが多くなった
あれにはもう一生分乗った
と言って
時々体を揺らす
背中が
押されるところではなく
支えられるところとなってから久しい


○母

美味しいのは音でわかる、と
スイカをひとつひとつたたき
一番良い音がしたのを買っていく
後には粉々になったスイカが散乱し
甘い匂いとともに
短い夏は始まる



○兄

深夜、起きだして
大好きな人のために
ひとり
腕立て伏せをする



○僕

これでも昔はもてたんだぞ
と自慢したりするけれど
今でも満員電車が苦手で
人に足があ
[次のページ]
戻る   Point(49)