うしろにいる/蓮沼 栞
止めようと思った。
「海の端っこが見たい。」
そう言って荒れ狂う波に身を投げようとする君を。
止めようと思った。
気持ち悪い偽の笑顔を浮かべ、ただ快楽だけを与えようとする君の手を 。
止めようと思った。
妖美な世界に呑み込まれ、自ら汚れにいく君の後ろ姿を。
僕達の生活の隙間には、これほどまでに深い闇があるのかと、何度思い知ろうが次から次へと増殖する闇は、
僕達の背後に隠れ、
僕らが気付くや否や、
逃げ惑う背中にピッタリと張り付き、離れない。
まだ気付いていないならアナタは幸福だ。
決して近付かない方がいい。
一生、知らなくていい事もあるんだ。
戻る 編 削 Point(1)