うしろにいる/蓮沼 栞
 


止めようと思った。

「海の端っこが見たい。」

そう言って荒れ狂う波に身を投げようとする君を。


止めようと思った。

気持ち悪い偽の笑顔を浮かべ、ただ快楽だけを与えようとする君の手を 。


止めようと思った。

妖美な世界に呑み込まれ、自ら汚れにいく君の後ろ姿を。


僕達の生活の隙間には、これほどまでに深い闇があるのかと、何度思い知ろうが次から次へと増殖する闇は、

僕達の背後に隠れ、

僕らが気付くや否や、
逃げ惑う背中にピッタリと張り付き、離れない。


まだ気付いていないならアナタは幸福だ。

決して近付かない方がいい。

一生、知らなくていい事もあるんだ。
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