名前を/ふるる
 
行かなくてはと思っていた
ここではなくどこか

北風の背中には
銀の翼があると思って
それに乗って行こうかと
寒い街中に出て
裸足であるく
身軽でいいと
荷物も何も捨てて
名前だけあればいいと

その名前は
丈夫な植物のもの
強い子になりなさい

そうわたし
強くなるために行く
遠く遠くまで

でも遠くで
強い子になるのではなく
道のりがすでに
とても厳しく問題が多いから
着いたときには
もうとてもとても強い子よ

北風の背中には
千の強さがあると思って
それを見つめながら行こうと
赤くかじかむ手足を
ぱたぱたと動かしてみる

(さあ、つかまった北風の翼は予想通りの冷たさで、わたしはこわくなくても震えが止まりません)
(あかぎれた手足からつたい落ちるものがありますが、とてもあたたかいのでわたしはへいきです)

そのうち
名前をくれた人たちにも
わたしの強さをあげましょう
太陽が金の糸で植物たちをくいくいとひっぱる
夏の夢の中
もしも思い出して
わたしの名前を
呼んでくれたなら
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