名前のない川/
熊野とろろ
川にもいろいろあるようで
長江やらガンジスやら一級河川やら
ただ今、僕の眼前を流れる川には
どうやら名前がないようだ
名前のない川
名前のない橋の下
家庭排水に汚染されたヘドロのような水ではない
とはいえ清流のような煌めきだって微塵もない
名前のない川は
まるで誰にも気付かれていない存在だ
水面からみえる苔の生えた底をよく見ると
銀行のカードや病院の診察券が沈んでいた
名前のない川に名前を捨てていくなんて
奇妙で仕方ない
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