通信/邦秋
 
声は聞ける

顔も見られる

だけど

声を発する

顔が見えない


条件付きの日々を

与えられた二人は


偶然の叶う夜に

同じ月を見上げることとか

別の電波が運ぶ

同じ曲を聞くこととか


間接的な糸をもって

互いの欠片を埋めようとする


だけれど、やっぱり

魅力の月光も素敵なバラードも

その場の慰めになるけれど

想いの窪みを埋められる山にも

心の汚れを流せる川にも

なり得ないのが現実だから、


発する顔は見えなくても

声が聞ければ、それがいい
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