『歩行者優先』/東雲 李葉
ため息が指に絡んで取れない午後
自由のきかない爪先が憎くって
歯の根を鳴らす不気味な横顔
この足は誰の意志に従って
懐かしいと思わせるこの道を歩いているんだろう
夕暮れが落下してくる
夜がにやりと笑っている
車に乗っていた彼らは
徒歩の僕を蔑んでいた
何者かに支配されてるみたいに
マリオネット
造花を渡され苦笑いする
月光がきらきら包んでくるから
古びた線路が見えてきた
ため息が足先まで伸びてきたら
意識が奥へ引きずり込まれる
走って!早く、早く、もっと早く!
誰か乗せて!歯の根が自然に鳴っている
制限速度飛び越して
逃げ出して 何から?何から?
ここは歩行者優先なのに
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