雨/吉岡孝次
ついに僕らは自分の心をしか探ることが
出来ず
冷たい雑踏をかきわけていた
少しでも前へ進みたくて人をよける僕に
きみは
遅れもせず ぴったりとついてくる
(そこからは
黒ずみはじめた僕の肩は見えない)
もっと道が短ければ と
誰かの声が聞こえた
Protestantでもあるきみは
食事を
残さない
きみの話はしばしば速すぎて
個々の点になると僕の理解がおぼつかなく
なりそうだ
だがあからさまに「わからない」といった顔をすると
くやしいらしい
じっと 僕の目を睨んで
それからいきなり戸外へと視線を
走らせてしまう
何もかも突然に始めるわけではない、と
僕は いつ知ることになるのだろうか
はっきりしない 雨脚
僕らの
やり方のまずさだ
映画館では「ザジ 」を観た
きみといる静謐を苦く 閉じ込めていた
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