雨中の虹/夏嶋 真子
同日7時35分pm
変わらない街、変わらない人たち。
特別なことなんて何も起こらなかった。
6月31日、この奇妙な時間の中
奇跡ではなく、いつも通り今を重ねていく。
一秒も、一生も 今の中にあるのかな。
雨が、心の敏感な場所に降る。
雨よ、おまえが優しいから泣いてしまう。
まだ行かないで、離さないで。
青空は、涙の一粒も許してくれないから。
まっすぐに顔をあげたまま、あたしは歩く。
濡れそぼつ頬のその先で、雨の中に虹をみつけた。
これはあたしの小さなキセキ。
家路をたどる、ほの暗い闇を
虹花(アイリス)が照らす。
やがて明日は今になる。
さしあたって、あたしがするべきは
現国の宿題。
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