雨中の虹/夏嶋 真子
6月30日7時11分am
テーブルの上には焼きたてのパン。
ママは気持ちの行き場がなくなると、パンをこねて焼く。
お気に入りのマグに注がれたミルクを手渡しながら、
天使みたいな笑みを浮かべてママは言ったの。
「親子だからって 愛情でつながっている必要なんてないのよ。」
ママの清清しい呼気に包まれて、
あたしの呼吸が荒くなる。
はやく、ビニール袋をちょうだい。
ゆっくり息をすってビニールがすぼむ。
(意味がわからない。)
パパとの仲はサイアクだけど
ママの愛を疑ったことなんてなかった。
今になってなんで?
ゆっくり息を吐いてビニールがふくらむ。
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