お祖母ちゃんの最期/小原あき
 
「あんなもんなのか」
と舅は言った


夫の祖母が亡くなって
納骨も終わって
夏が始まろうとしていた


できたばかりのわたしたちの庭には
ちょこちょこと
なんやかやが芽生えだしていた


介護施設のベットの上
婿養子がサンドウィッチを食べる姿を
最期に見た祖母は
何を思っていたのだろう


さよならを言える人は
どれくらいいるのだろう


まだ蝉は鳴かない
春の匂いがそこかしこに残っていて
でも、もうすぐ
ひまわりが咲くよ


ひまわりは
最期にお辞儀をする
さよならではなく
ありがとう


最期にこぼした涙が
受精して
着床する


お祖母ちゃん
曾孫を見せてあげられなくて
ごめんなさい


あなたの涙で
きっと
受精させて
着床させて
そして…


うまくいかない時もある
だけど
来るときは案外
簡単に来るものなんだ



「あんなもんなのか」


舅の声が
あたまから離れない







戻る   Point(7)