雲梯/霜天
 
突然のことを「風」と名付けた
まだ受け身を覚えてもいない
優しい、と言われるほどに優しくはなく
平均化された僕らは、どこにでもあった

人がいなくなって初めての夏はとて、も暑かった
ぶら下がる夢、ばかりを見ていた
毎日は揺られながら過ぎていく
振動音、ブレーキの、音、轍の深さ
何事もなくかたちはあって、
滞りなく組み上げられる




人の上に朝がくるように
当たり前のようにぶら下がり続ける
あなたというかたちから、僕らが零れていったとしても
この手が痺れるまでは離さないだろう

この手が痺れるまでは離さないだろう
この手が、離さないだろう




発車のベル
世界が白くなり、音が戻ってくる
組み上げた一日を順番に、崩す
手を離した、人から
僕らは少しずつ、零されていく
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