庭先の夢/HTNYSHR
 
季節はいつも虫の鳴き声に寿がれていた
それがコノ、苫屋の蔦茂した夕暮れの
遠い景色の移りゆく様の記憶
土と草と太陽と
月と
日の燃えさかりの向こうには
為てやり顔の


ご機嫌なのだろう
右手で長く垂れた髭をなぞり
雨と風を祝っている
「晴れもすれば風も吹くさ」と
目を細めながら諭している
少し
理解の先に焦点をズラし
ニヤつきながら謡っている
それがやけに懐かしい気がして
月の光にハッとする

破れた紙の向こう側に透けて見えるのは
宙に舞った埃の中で光が行き場を失っている様
落としどころ無く続けられる習慣と伝承の愚かさと
潰えゆく何ものかとの葛藤の日々は
振り回される葉っぱたちの風に擦れ合っている音のように
同じような繰り返しの中でその味を噛みしめている
忘れ難い笑い声が耳の底に響いているままで
庭に注ぐ月の光は草の露を捉えていた
虫が鳴けば森が騒ぐ
空を仰ぎ光の糸に操られているかのように
指が動く

来るモノ拒まず
ということなのだろうか

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