地蔵菩薩/within
ていた。境内には僧が箒を持って梅の木の枝を眺めていた。こちらに気が付くと
「今日は二度目ですね」
と言い、僕が
「はい、……」
と消え入りそうな声で答えると、再び僧は木の枝を見やり
「この枝、切ったほうがいいと思いますか? 」
と訊いてきた。僕は
「切らなくてもいいんじゃないでしょうか」
とだけふり絞り、石段を下りた。
月夜の森の暗がりに迷い込んだようだった。山門をくぐり道へ出ると、雨風と黴で黒くなったらしい野ざらしの小さな一体の地蔵が立っていることに気がついた。あれ? こんなところに地蔵なんてあったかしら、と不思議に思ったが、賽銭入れもあり、一円玉や五円玉が数枚入っており、たしかにここに以前から佇んでいたのは間違いないようだった。地蔵を見ているうちにぽっかりと空いた穴ぐらにとぐろを巻くような何かが込み上げ、破れかぶれに、ええい、もうこうなればという思いで、財布の中の全ての小銭を投げ入れ、ぎゅっと固く目をつむり、手を合わせひたすら念じた。お地蔵さま。
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