子吉川/小川 葉
父さんと
子吉川で釣りをしていた
海の近くだったので
時々川が逆に流れていた
時間は正しく流れてるのに
潮が満ちると川だけが
昔へ還っていくようだった
父さんは
いつも僕と離れて釣りをした
僕と釣りにいく口実で
本当は一人になりたくて
子吉川に来ていたのかもしれない
そんな気がしたことも
時々あった
魚はひとつも釣れなかったけど
釣れなくてもよかった
ただ時が静かに過ぎていて
川の流れを見てるだけでよかった
何も考えずに
何かを考えてるうちに
時々僕の背後に
知らないおじさんが立ってることがあった
父さんと同じくらいの歳で
最近
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