継続する音の世界で/みぞるる
 
ねぇ
そのひんやりした床に
目を閉じて
耳をあててみて?

高速で道路を走り抜ける車が
ささやかに笑い合う地下水が

優しい歩調で歩いているあの人が

おしゃべりしながら列を成す蟻が
岩陰であくびをする深海魚が

ほら
音は止まない
音はささやく
ひとりぼっちのこころの隙間を
ひんやり
優しく埋めてゆく


ねぇ
あの電信柱を仰いでさ
目を閉じて
耳に手をかざしてみて?

モンゴルの星空を見上げる少女が
イスファーンのモスクを修復する若者が
釧路湿原で深呼吸をする老人が
ここで耳を澄ますひとりの人間が

音は
終わらない
音は
どこまでも続く

そうしていつしか烈しく反射し
どこかで必ず
わたしたちの元へ戻ってくるのだ

世界中の呼吸をたずさえた、
うつくしい音の群生が
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