忘れ物/殿岡秀秋
 
遅刻しそうになって
朝食を喉につめて
走って小学校に行く
教室に入ったとたんに思いだす

今日は図画工作の日だ
先生から新聞紙や糊やハサミや色紙を
持ってくるように言われていた
ぼくは何も用意していない

自分の席にランドセルをおいて
周囲を見る
同級生たちは
工作の準備を始めている

二時間の授業を
どう過ごせばいいのか
職員室に行って
忘れましたと先生に言おうか

このまま家に帰れたら
どんなにいいだろう
朝日に埃が光る
授業が終るまでは
小学校を出るのは禁止だと
ぼくの周りに張り詰めた柵ができている

なんとか乗り切らなくてはならない

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